MPの価値について

ツクールWebフォーラムβに話題として載っていたものです。

参考URL: MPの価値について

これを題材に、ここ(nekono.org)の作者がMPをどう捉えているかをあらためて見直してみましょう。記事が無駄に長いので、フォーラムへの投稿は諦めてしまいました。内容的に考えて、自分の日記にでも書いてろ的な代物ですものね。

 

ネトゲではHP/MPの自動回復は普通

基本的にネトゲの考え方を踏襲するため自動回復を搭載しますが、HPとMPの両方を回復させると、HPとMPの差別化が難しくなってしまいます。

そこで、自動回復はHPのみ、しかしその代わりに徹底的に回復させるという手法を採りました。

 

HPは戦闘の勝敗判定に特化

基本的な考え方として、戦闘終了時にHPは全快します。迷わず決めた仕様です。

理由は、通常のプレイにおいて戦闘終了後には(回復手段があるならば、ほぼ毎回必ず)HPを回復させるためです。

このHP自動全快システムは特に珍しくもない、どころかむしろメジャーなのでは? と思うほど参考作品の数が多いです。

HP回復手段が用意されているのにHPを回復させないのは、あえてそのように縛りプレイをしているか、単に面倒になったか、ザコ敵に余裕で勝てると踏んでいるためか、HP回復手段があることを知らないままプレイしているか(これは結構アレですが)、いずれにしても丁寧にプレイするつもりならまず行わない選択でしょう。

つまり、一般的にと断りを入れられるなら、プレイ中のリソース管理の一環としてHP回復はさせると考えて良いでしょう。この行動は特に制限されない限りはゲームの最初から終盤まで続きます。

プレイヤーの私は何度も思いました。自動化してくれと。

この辺りはネトゲはうまく処理してくれます。戦闘中に自然回復することは無いか、回復するとしてもごく微量ですが、戦闘状態が解除されると物凄い早さでHPは回復していきます。HP回復アイテムは存在しますが、それらはいずれも戦闘中の速攻回復やリジェネ(少しずつ時間をかけて回復)を想定したアイテムです。

戦闘から離れたタイミングで自動的にHP全快しないものは「FEZ」くらいしか見たことないぞ。まあ、FEZの戦闘終結後に全快しない仕様はコンセプトでも何でもなく、単に未実装のまま優先度が低く、放っておかれているだけのような……。

多くのケースにおいて、ネトゲでは非戦闘時にしか使えないHP回復薬というのはゴミなんですね。バグってもいない限り、その類の非戦闘時用アイテムは登場しません。

私も自分の作品で非戦闘時用のHP回復薬を出すつもりは全くありません。さらに言うと戦闘時用のHP回復薬も出していませんが、それは主人公の種族が猫のためです。猫は、HP回復薬で体力が回復しますか?

 

MPの存在意義は世界観次第

MPの扱いを決めるには、まず魔法とは何か? の問いに答えが出ていることが大事です。

魔法の定義が定まっていないと、MPは何だかよく分からない数値になってしまいがちです。作者がMPのことを曖昧にしていると、プレイヤーはもっと理解不能です。

私の場合は、魔法というものが大気中の”マナ”を行使するもの(解説すると恐ろしく長くなるので、とても大雑把な説明をしました)、という定義をしたことにより、魔法使いの所持するマナは無い(あるいは微量)ということになります。

すなわち、この世界観とやらをゲームを設計する立場でみた場合は、MPをリソースとして見ることができないため(魔法使い本人は、”MP”を持っていない!)、魔法が堂々と存在する世界観にも関わらずMPという概念を廃止することになります。

システム上は「MP」を残し、画面では名称を変えて別のパラメータとして再利用していますが、それはまた別の話。魔法とは全く関係のないパラメータになりました。

では、魔法使いにMP切れは無いのでしょうか?

はい。文字通り、MP切れは存在しません。

理由は、盛り上がる戦闘シーンにおいて魔法使いのMP切れという状態を表現しても、面白くもなんともないという、ミもフタもない結論に達したためです。

魔法でのバトルは、味方はMP回復アイテム等を駆使してバンバン魔法を行使しますし、敵も(ごく一部のRPGを除き)MP無尽蔵だったりして魔法を撃ちまくってきます。

「ルナティック・ドーン II」等は(当時のRPGとして大変珍しいことですが)敵にMP残量があって、敵のMPを吸い取りまくって枯らすと魔法を撃てなくなるので、事故もなく安全に勝てるという戦法が通用しますが、そういうのはルナティック・ドーンだけで十分です。あの戦法も面白いですが、もうお腹いっぱいです。フリーゲームではその作戦を持ち出すつもりは無いですね。

それに、MP回復アイテムが入手できるのであれば、敵のボスもMP回復アイテムを使えると考えるのが自然です。いや、理由付けは何とでも出来ますけど、プレイヤーからみると「主人公と仲間は回復アイテムを使えるが、敵のボスは回復アイテムを使えない(使わない)」という設定は結構苦しいです。つまりゲームの仕様を先に決めてから世界観を後付けしたので、そうなったんでしょ? と。こうなると正直厳しいです。

 

MPに価値はあるのか

MPの概念を廃止すること自体は別に珍しくも何ともなく、プレイヤーとしてはそこに新鮮味は無いのですが、RPGツクールの(インターネットで事実上の初公開=第1作になるであろう)作品で本当にそれをやるのは、良い意味でも悪い意味でもチャレンジャーでしょう。

第1作では大それたことは試みず、先人の作品によく学び、基本に忠実に制作をしていったほうが方が良いとされていますし、私もそう思います。しかし、それでも私はマナに関してどうしても譲れない設計があったので、MPは廃止してしまいました。

また、プレイヤーとして、フリーゲームなどでは、プレイ中のリソース管理(MP管理、回復薬の管理)をしたくないという”本音”があったことも否めません。

全キャラが勝手に最適なMP管理を行っている(のでプレイヤーは見ているだけで良い)としたら、どんなに嬉しいでしょうか。

プレイヤーが本当にMP管理を楽しみたいなら、MP管理がプレイヤーの手腕に委ねられている、過去の名作RPGをプレイするのが絶対良いです。MP管理が楽しいフリーゲームを探すとか効率悪すぎます。フリーゲームって基本駄作なんですよ……。過去に市販されたことのあるRPGから未プレイのRPGを探していった方が、まだ掘り出し物に出会える確率が高いです。

RPGツクールの作品で、HPとMPの概念を基本に忠実にそのまま使ってくるというのは、過去の名作RPGとガチで勝負しているようにみえてなりません。私はあえてガチではなく、斜め上に外していったほうが面白いと思い、魔法使いがいるのにMP廃止という結論に達しました。

 

MPを廃止しても魔法が飛び交う世界

スペルの消費MP? ええ、全部0です。MP残量を一切気にせず撃ち放題です。まあ敵も同じ条件で撃ってくるんで必ずしも有利とは……。ぶっちゃけ魔法合戦になると実力差が拮抗していても、わずかな判断の差や先手後手の差によって勝負が一瞬でつくという世界です。ネトゲのPvPかよ。

MP回復薬は廃止、MP増加のオプション付き装備も無し、キャラの最大MP上昇も考えなくて良い、といった省力化の効果もあります。
また、総じて戦闘シーンが短いのでATBを採用しやすいです。そうすると決まったわけではありませんが、大きな問題がない限りはATBになると思います。欠点は仕組み上どうしても発生するプレイヤー側の”待ち”の時間ですが、戦闘の所要時間が短ければ欠点は目立ちにくくなります。というより、ATBの長期戦とか止めてくれと思います。長期戦は、やっぱり長期的に考えていけるターン制がほしいところです。

MPを廃止したためにATBを使い易くなっている、というのはあります。ATBにおいてキャラのMP管理は、あまりやりたくないですねぇ。逆にATBは先手後手の有利不利がはっきり出るので、一瞬の差で戦闘の決着が付くデザインには向いています。

ターン制では先手後手の差の演出が少々苦しいのと、ターン制はプレイヤーが慣れてくると戦法が最適化されてザコ相手には本当に「全勝」になってしまうので、長丁場になると眠くなってしまうんですよね。

ATB、特にアクティブATBの場合は油断していると一方的にボコられて負けますので、全勝になりにくいんですよ。これもネトゲに近いです。

 

MPを廃止した本当の理由

「猫にMPってあるの?」

「さすがにMPは無いでしょ。MP残量気にしながら育てるとか、あまり聞かないし」

「じゃあ無しで! ちなみに魔法とか無限に撃てるの?」

「電池切れはあるよ」

「じゃあそれで」

MPが消えた瞬間である。